コラム

人はつながっている(第1回) ~物理学と健康の不思議な関係~


4.幸せも、感染する

これまで肥満が感染症であった、ということをみてきましたが、クリスタキス教授らの最新の研究によると、肥満だけでなく「幸せも感染する」ことが分かってきました(図3参照)。


図3. 幸せの感染モデル
参照:Christakis and Fowler (2010) Connectivity.

クリスタキス教授によると、あなたが幸せになると、友人の方が幸せになる確率は15%上がるそうです。その影響は友人の友人、さらには友人の友人の友人まで影響し、その先には影響しないことも分かっています。

逆に言うと、自分が今日幸せを感じられるかどうかは、直接会ってもいない誰かの気分の影響を受ける、ということです。これは以下のように考えてみれば、なるほどと思える話になります(表1参照)。

表1.ネットワークの例

関係 具体例
あなた
友人 職場の女性同僚
友人の友人 職場の女性同僚の旦那
友人の友人の友人 職場の女性同僚の旦那の嫌味な上司

あなたが朝会社に行ったら、職場の女性同僚(友人)が沈んだ気持ちだったので、あなたも沈んだ気持ちになりました。その理由を聞いてみると、旦那(友人の友人)が朝から機嫌が悪かったというのです。なぜ機嫌が悪かったのかというと、職場の上司(友人の友人の友人)から旦那が理不尽に怒られたというのです。

このように見ていくと、あなたが朝職場に行って沈んだ気持ちになったのは、あなたが見たこともあったこともない、職場の女性同僚の旦那の嫌味な上司(友人の友人の友人)の影響を受けたためともいえます。幸せにご機嫌に生きていくためには、ご機嫌な人のネットワークを築くことが重要といえます。