コラム
人はつながっている(第1回) ~物理学と健康の不思議な関係~
1.友達が太れば、あなたも太る
「肥満は感染症である」という衝撃の研究結果を発表したのは、ハーバード大学のクリスタキス教授。まずは、彼の研究を紹介致します。アメリカはフラミンガム市に在住の住民約12,000人を、1971年から32年間追跡した研究結果によると、確かに肥満が「感染」していることがわかりました。
肥満が感染するとは、もう少し分かりやすくいうと、「自分の知り合いが太った時に、自分も太る」ということです。図1に、知り合いの種類別に、相手が太った時に自分も太る確率について示しました。
図1. 相手が太った時、自分も太る確率
参照:Christakis and Fowler. (2007) NEJM:357;370-9.
クリスタキス教授によると、知り合いの種類によって、太りやすさが違うことが指摘されています。一番太る確率が高いのは、「両想いの友達(自分は相手を友達だと思っている市、相手も自分を友達だと思っている)」の場合です。なんと、両想いの友達が太った時に、自分が数年以内に太る確率は171%上がるそうです。
一方、「方想いの友達(自分は相手を友達だと思っているが、相手はコチラを友達だと思っていない)」の時、相手が太った場合に自分が太る確率は57%上がるそうです。面白いのは、「ストーカー(自分は相手を友達だと思っていないが、相手はこちらを友達と思っている)」の時で、相手が太っても、自分が太る確率は変わらないそうです。
また研究によると、友達の影響に比べて、配偶者の影響が少ないこともわかりました。配偶者が太った場合、自分が数年以内に太る確率は37%しか上がらないようです。
さらに、肥満が感染するのは、知り合いが太り始めた場合だけで、最初から肥満な知人がいたとしても、それが原因で自分も太るということはないことも分かりました。
「なぜ、肥満が感染するのか?」という質問に対して、クリスタキス教授は、「おそらく、心理的な要因が大きいように思います。自分の知人が太ったのを見た時に、「あの人が太ったのなら、私だって少しぐらいなら・・・」と、肥満に対するバリアが下がることが原因だと思います」と答えています。