コラム

人はつながっている(第3回) ~物理学と健康の不思議な関係~


3.地域の中で誰がティッピングポイントを超えるのか?

さて、サッカースタジアムを例に、大きな変化を起こすためのティッピングポイントについてみていきました。しかし、サッカースタジアムで大きな変化を起こすのと、地域で大きな変化を起こすのとでは、次元が異なる話であることはいうまでもありません。

一番の違いは、人と人とのつながりです。サッカースタジアムの中では、どの人を見てもかならず沢山の人間とつながっています。図2に例示しましたが、赤く色を塗られた人は、少なくとも上下左右斜めの8人と直接つながっています。そのため、赤い人が立ちあがってウェーブを起こしたら、周りの8人に影響を与えられることになります。

  
図2. サッカースタジアムにおける人のつながり

しかし、地域の人間関係のつながりは、サッカースタジアムとは違います。実際の地域では、沢山の人とつながっている人もいれば、わずかな人としかつながっていない人もいます。図3に地域の人間関係の一例を示しましたが、Aさんは、わずか一人の人としかつながっていません。そのため、Aさんが立ちあがって行動を示しても、その波及力はわずか一人と、とても小さいものです。


図3.地域における人のつながり

どうせ同じ一人が立ち上がるなら、地域のつながりの中心にいると思えるBさんが立ちあがった方が、周りへの波及力は大きいように思います。

サッカースタジアムの中では、5万人の中から任意の30~40人が立ちあがることで、ウェーブが起こります。しかし地域の中では、つながりが多い人から順番に立ちあがることで、ウェーブが起こりやすくなるといえます。